2013年06月03日

格安ストラトのチューンナップ #1

標準的な構成のストラトをセットアップ。
しかし、旧来の手法そのままを "再現" することは大手メーカーに任せたい。
古い楽器そのものについて思い入れは全くなく、高価で買えない貧乏人のひがみだろうととられても否定しない。
発案者などイノベイターとして尊敬しているし、それを解析し更なる改良を目指した先達も同様である。
プレイヤーでもコレクターでもなく、自らの手で楽器を活かすことこそ私のやるべきことだと自負している。
だから、オリジナルについて詳しく知りたい方には役に立たないことしか書けない。

そこに意味を見い出せないので、現在の目で見て修正すべき箇所は全て手を入れる。
私はこれを『改 造』とは考えていない。
より適した品質のパーツを選択換装し、楽器本来の姿に近づけることが目的。
クルマで喩えるならば、廃車同然の中古車を引き取ってノーマル状態に戻し車検を通すようなもの。そしてレースに出そうという感じである。
極太タイヤを履かせシャコタンやら竹槍やらでドレスアップ?することではない。

今回もまた中国製の格安品、中古屋でジャンク扱いだったもの。
メイプルネックの全面に虎杢が浮かび、実はこれが気に入って購入した。
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スペックは平均的なもので、製造年で仕様が異なるFender仕様をあっさり無視している。
まずヘッド側からチェック。
ヘッド形状に物凄い違和感があるが、デザインを変更することで解決したい。
ロトマチックタイプのペグは全く好みではない。ストリングガイドが2個仕様だが1/2弦用に1個だけでいい。ナット材もプラスチック、これも交換前提なので気にせず。
現状ネックの具合は軽い順反り、ただし弦は錆びてチューニングも合っていない。
ボディはメタリック系カラーにしてはそれほど厚くないポリウレタン塗装と思われ、塗装面のキズは少なめながら打痕も確認。
ブリッジは10.5mmピッチのサドル。信頼性が低いスイッチやポット、裏面にフェライト磁石を貼付けたPU。これらのパーツは低価格製品によく見られるタイプ。
結果としてネック/ボディ以外はネジも含めて全交換となった。

オリジナル開発当時のペグはクルーソン製であった。それをネジ穴の位置でカットし、ヘッドの長さを抑えつつ取り付けネジ本数をも削減したアイディア。
その後に開発されたロトマチックタイプは、クルーソンタイプより部品単価が高くなる割には廉価モデルによく使われている。ペグ本体を表から六角ナットを締め込んで固定するというのがミソで、次いで回転止めネジを打つ。組み立て作業はこれだけで終わる。ポスト穴径およびそれぞれの位置間隔はルーズでも全く問題ない、組み付けも電動ドライバだけで済み工程が簡略化、製造コストが安く済むのである。
ロトマチックタイプに換装する場合も同様で、穴径を拡大するなど収まることを確認して1個ずつ固定するだけでOK。組み立て精度は要求しない。
ところがクルーソンタイプの場合、先に打ち込んだブッシュに合わせペグ位置をしっかり決める手間が掛かる。
ネック材を削り出して穴開け工程後に木が動いてしまうことでペグ穴間隔は均等にならなかったり、穴のセンターも直線状に並ばずわずかにズレてしまうこともしばしばある。
その状況で6個並ぶペグを7本のネジで、つまり隣合わせ2個を1本で押さえるため下穴も正確な位置と垂直に開けることが求められる。
専用の治具を用意したところで熟練を要する工程なのは変わらず、これは生産管理も含めた人的コストでロトマチックタイプの比ではない。
だがクルーソンタイプペグが装着されていても、有名メーカー製でさえ取り付けに問題がある例も多く見かける。ネジが斜めに入ってるなんてのは、もう単なる手抜きだと断言して構わない。もちろん要修正。

ペグというパーツは金属製なので比較的重量があり、楽器の重心から遠く離れた端部に載せているので、この重量による音質への影響度が大きくなる。例えば野球のバットを水平に持つ場合、グリップ側を握ると重く感じるがその反対側を持つと軽く感じるはず。その状態で小刻みに震えさせる(あるいはもう一方の手でバットの中心付近を軽く叩いて振動させる)とする。どちらが容易にできるのかを考えてみて欲しい。
当初に採用された軽いクルーソンのペグはプレスした鉄板をカシメることでギアを保持する構造のため、緩んでガタついてしまうと精度が不安定になってしまう構造上の欠点があった。
その後にGroverやSchaller等が頑丈な改良品として販売され始めたのがロトマチックタイプ。
ポストに直結するギアのサイズに合わせた鋳物(ダイキャスト)のハウジングを、ヘッド表からポストと同軸のナットで固定し、グリスと共に圧入されるギアカバーで蓋をする。
精度に影響するような脆弱さは克服したものの、重量増加による音質への影響は無視出来ない。
端部の重量大によりネック自体の慣性が強く働くため動きにくくなりサスティンの向上が認められるが、その代わりに倍音構成が単純化されてしまい、高域のヌケを始めとする鳴りが変化する傾向がある。
(余談ながら、同時期に登場したブラスナットも少なからずその要因になった)
オリジナルと同様の、倍音の多いカラッとした音が欲しい場合はクルーソンタイプのペグが必須である。

また「ギア比が大きい高級品」なんて宣伝文句があったりするが、実際はコンピュータ制御による加工が一般化し必要十分な精度で作ることが可能な現在において構造的に言えばサイズ上の制限でしかなく、同様に「トルク調整可能な高級品」という誤解もあるようだ。分解してみると分かるが、組み立ての都合でペグボタンを別体にしハウジング内側から通したウォームギア軸にボタンをネジ止めするから副次的に可能になっただけ(これによりボタンのバリエーション展開も容易になったとも言える)。
このタイプが全て上質なものではない。穿った見方をすると、組み立てやすいように精度を甘くしてもボタン部分で締め付けることで「ガタつかない」と思わせて誤魔化せてしまう。まずはギア精度が最重要であり、逆方向に回した時にガタがバレるようなペグではトルク調整など全くの無意味。

本家を含め各社で標準として採用されているGOTOH製のクルーソンタイプ:SD90/91は互換性がありながら全面的に改良されたもの。2本の直交する軸を裏側のギアカバーで受けているオリジナルと同様の構造と外観で、製造工程にて適切に管理されたカシメ具合によるトルク感があるので調整機能そのものも不要。ギア加工精度はもちろん全体的な組み立て精度に関してもオリジナルを凌駕し、総合的に見てGrover製を含むロトマチックタイプをも超えるクオリティ。
後で変更することが困難なボタンのバリエーションもオプション指定可能、SD91を更に軽量化することが可能なプラスチック製ボタンも用意されている。サイトにてアルミ製ボタンの告知があって期待したのだが、ロトマチックタイプ:SGシリーズのオプションということで残念。
両方のタイプに共通する注意点として、何らかのダメージで回す感触が変化した場合は要交換と考えるべき。カバーを外して、ギアの嵌合状態をキープしつつ組み直すなんてまず不可能だから考えない方がいい。

オリジナルのKlusonブランドも復刻されたようだが、ロゴ優先の単なる懐古趣味ではないだろうか。GOTOH製よりも良質と判断できるような要素は見られない(のでわざわざ質が劣る製品に換装する意味はない)。
また、わざわざ「ペグを浅く(ポストを低く)セットする」ような小細工も、弦テンションを増加させて結果的に悪化するだけなので行わないし、推奨もしない。1/2弦はそのためにストリングガイドがあり、5/6弦に関しては逆にナット上での弦角度を大きくしたいくらいである(それを実現させるのがGOTOHのH. A. P. タイプのペグ)。
当然、3/4弦へのストリングガイドは不要と考えている。ルックス的に外せない旨の要望がある時はスペーサーで嵩上げして対処する。アーミング時において、プレーン弦ならまだしも巻き弦では弦が滑りにくくなる欠点も無視できない。

まずはヘッド部分の全面改装。
ヘッドの外周ラインを修正、またナット裏方向へ繋ぐラインも大きく膨らんだ形状になっており、見た目だけでなく握って違和感があるので削り込んで修正。
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上述した通りペグは交換。SD91-MG(Amazonはこちら)を使用。
弦交換の手間を軽減させる狙いを第一にマグナムロックを選択。当初はアーム使用時につきものの「狂い」を最小限に抑える目的で開発されたもの、構造と取り扱い方法はGOTOHのサイトに動画で解説されている。市場に登場して20年以上経過しているのに、未だに認知度が低いと感じられることが非常に残念でならない。

ロトマチックタイプのペグ穴径がφ10mmほど(定位置に収まってナットで締められるならルーズなサイズでも構わない)なので、クルーソンタイプに交換する場合には適合するコンバージョンブッシュを使うことで解決しそうに思えるが、片側6連の場合はペグ穴の間隔も問題になる。
15/16インチ=23.8mm、≑24.0mmで揃ってなければならない。狭いと収まらないのは当然、1mm以上広くてもネジが効かなくなるのでNG。
今回のネックは合致しないので、現状の穴を埋めて開け直す。
Fenderの図面では、上から3つ目のペグポストをネックのほぼセンターライン上に配置している。
この3弦ペグ穴を基準にして6つのペグ位置を考察して決める。すると埋めた穴はブッシュで隠せないことが判明、隠すため表面にメイプル突板を貼る。
ヘッドは13〜15mmの厚さを目安にする。オリジナルでも個体差があるのでサイズにはこだわらない。
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弦によるテンションを掛けない状態でトラスロッドを回してみてチェック。
反り具合を調整可能で、指板上が波打つこともない。捻れも感じられずひと安心。杢が入った材の場合は狂いやすく、メイプル1Pネックで派手なトラが出ているものは要注意である。組み立てた時点でOKだったとしても、例えば10年後まで予測することは困難。指板を貼ってるタイプでも疑ってかかるくらいでよく、今回のはローズウッドを柾目で使っているためしばらくの間は実用的な問題は発生しないだろうと判断した。
調整をヘッド側で行うタイプのネックの場合、長いレンチを用意すると楽である。よく使われている4mmの製品はこちら。
  


#150サンドペーパーでポリエステル塗層を剥がし、メイプルの場合は木地を#240→#400(ローズウッドやエボニーでは#1000まで必要、更にペーパーの裏面で光沢が出るまで)研磨。
指板面の手垢汚れを落とす。ラッカーシンナーでもいいが、ラッカー塗装されている場合はライター用オイル(この成分はナフサ)を使う。
また『レモンオイル』と称されるものは溶剤が主成分、間違ってもツヤ出し剤ではない。ラッカー塗装面をも溶かしてツヤを失ってしまうほど強力なので基本的には未塗装木部に使う洗浄剤である。塗り過ぎると内部に浸透してしまって悪影響(水分を吸ったことと同様に鳴りが悪化する)があるので必ず拭き取ること。
これを塗ったところで絶対にオイルフィニッシュにはならない。
私が仕上げ用に使うオイルは擦り込んだ木地の表層で固まる「1液ウレタン塗料」である(チークオイルや亜麻仁油などの植物油を使う旧来の方法もあるが手間が掛かる上にギターには不向き)。もちろん既に塗装された面に施すものではない。
使える樹種はメイプルやローズウッド、ウォルナットの他「エキゾチックウッド」と呼ばれるブビンガやウェンジ等の硬くて高密度、吸水性が良くない材に限られる。ボディ材として多用されるマホガニー/アッシュ/アルダー/バスウッドには適さない。


指板面にあった凹みを修正。
薄い紙を小さく切って水で濡らし、凹んでいる箇所に載せてからハンダごてで加熱する。水分を一気に蒸発させると膨らむことで元の形状に戻すことが可能、焦げないように注意(当然この方法は木地にのみ可能。塗装された面については剥がすことが前提)。
フレット両端部を考察。
中国製に限らず廉価品ではタングを指板幅よりも短くカットしてから打ち込まれたものが増えた。オーバーサイズで打ち込んでからエッジをツライチに削るよりも、クラウンだけ揃える方が手数の削減になりコストダウンになるからと考えられる。溝の凹みは塗装で対処するのも合理的と言えなくもない。
塗装を剥がしたためタング溝も露出、この隙間から汗が染み込むと内部で錆びたり溝が崩壊するなど悪影響があるので事前に対策。瞬間接着剤で塞ぎ、指板サイドを平滑に研磨して仕上げる。

アームを使わないと決めて、ブリッジは敢えて6点止めタイプにした。
オリジナルと同じ11.3mm規格の鉄製イナーシャブロックを事前に購入していたのでこれに合わせて11.3mmピッチのプレート(当然こちらもスチール製)を単体で購入、同一規格のためネジ穴も合致するので組み合わせた。
イナーシャブロックとの接合面であるプレート裏にバリがあって密着しないので平面に研磨。
固定ネジはステンレス製、緩まないようにトルクを強く掛けられる六角レンチで締め付けるタイプに変更した。
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元のブリッジ、10.5mmピッチサドル。
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薄いイナーシャブロックのため軽く感じ、測ってみたら200gしかない。ここは重い方が有利なことは'50年代の開発時に明らかになっている事実。またサドルも亜鉛合金で、材質的にも精度も悪く振動を伝えるパーツとして使い物にならない。

このブリッジに限らず安価なブリッジは、私が見た範囲ではどれもサドル間に隙間があった。
オリジナルのFender製ブリッジはサドル幅を弦間ピッチと同一にして隙間無く並べ、弦を張ることにより横方向に動かずに(密着してブレなく)弦振動ロスを抑制させるように設計されている。これはプレートとサドル上辺を平行に、階段状になるように高さを調整することが必須。指板Rに近づけようと上辺を傾けて山型状にセットするのは間違いで、弦がサドルの低い方に落ちてピッチが広がるだけでなくサドルの密着度も低下してしまう。
弦間ピッチはプレート側のサドル固定(オクターブ調整も兼ねる)ネジ穴の径と間隔に依存し、これより広いサドルでは斜めにセットされてオクターブ調整に不都合を生じたり、狭いサドルでは左右にガタつき上記の利点が失われてしまう。合致しているように見えても精度が甘く穴径が大き過ぎる場合もあるので要注意。
11.3mm規格のブリッジプレートに狭い幅のサドルを組み合わせたところで、隙間が生じてピッチは狭くならず音質的にも不利な結果になるだけである。ピッチ変更を望むならユニット一式での交換しか手段はない。
「サドル間の隙間があるから各弦で音の分離が良い」という主張も見かけた。そう思い込むのも自由ではあるが物理的な根拠も示せない全くのトンデモである。
金属製パーツで組まれたブリッジ各部のネジが緩まず正常に機能している前提で考えるならば、全体がひとつの塊として働いていなければならない。隣り合った弦の振動は互いに干渉しつつもロスは少なくブリッジへ伝わる。サドル左右にブレが生じてしまうと弦振動はサドルを横方向に動かす力として分散し、結果としてブリッジに伝わる振動が減ってしまう。

個人的にはやや狭い10.8mmピッチのブリッジが使いやすい。
Fenderオリジナル仕様ギターからも、またGibson系ギターに持ち替えても違和感が少なく、9.8mmや10mmピッチ等のハムバッキングPUポールピースに合わせやすい効果もあり、以前はGOTOHでも1088Tという2点支持スチールプレスサドルのものがあり、私も標準品扱いにしていた。
現行品の510Tシリーズも10.8mmピッチである。残念ながらSS1サドルがディスコンになってしまったが、これはこちらで取り上げた。

ブリッジ関連では「10.5mmピッチ」ブリッジの検索ばかりが目につくが、私はイレギュラーと考えている。
新し目のFender製ミドルクラス以上の一部に搭載されているものもあるが、一般的とは言えない限定仕様のパーツでありここでは一切言及していない。
それ以外、10.5mmサドルと明記されていても精度が出ていない廉価コピー品のパーツではその各部サイズも怪しく、グレードアップするには適合するサドルを交換することが唯一の手段。
GOTOHのオプションに11.3mm、10.8mmと並んで10.5mmのブラス/スチールのサドルが用意されていて、通常は大手楽器店経由で注文することで入手可能。また、GRAPHTECH製ストリングセイバーサドルもある。
イナーシャブロックに関しては固定ネジピッチが異なると適合しないことくらいは想像できるだろう。
検索されることが多い「10.5mm ブ ロ ッ ク」なんて材質に関わらず今まで扱ったこともないし、興味もないので記述のしようもない。
10.5mm未満の狭いピッチのサドルにしても同様、製品として販売されてるかも私は知らない。
なぜ多くの方がわざわざそんなものを求めてるのか、全く分からないのが実感である。
『手に入らないもの』を諦め切れないなら、「自ら作る」か「作ってもらえるところを探す」ことだろう。ただし金属加工業者に依頼するとワンオフ製作は既存と同じパーツでも代金は一桁以上増え、物によってはギター本体の価格を越えても不思議ではない。

10.5mmピッチ品と10.8mmピッチ品を比較しても、1-6弦間で(0.3mm x 5 =)1.5mmの差。全体的に甘い精度から考慮すると両端でそれぞれ1mm±α程度の違いでしかない。指板最終フレット上でも同様であり「(元が11.3mmピッチではよくある)弦落ちが心配」であるならば、事前にネック/ボディのセンタリングを正確に詰めてネックポケットの嵌合ををタイトに加工修正しておく方が確実なことは言うまでもない。10.8mmの高精度で組まれている製品の方が、より重要な「弦振動の伝達」効率も改善されるので『音質向上』にも有効。
ネックポケットがルーズなままでは、弦落ち回避のためネック位置を動かして合わせる手間はもちろん、ボディ/ネックの着け外しの度に密着具合が変化してしまい一定ではないことはお分かりだろう。その結果として生鳴りも変わって聞こえる経験はないだろうか。
また肝心なポケットに手を着けることもせず、安易に『音質改善パーツ』なるものを後着けしたところで何の意味が? 楽器全重量の数%にも満たない小片を重心付近におく、その程度の効能を信じる前に、原因はそこなのか(他の要因を洗い出して厳密に揃えないと判断は不可能)をよく考える必要がある。こんなのも科学的思考が弱いと騙される、あちこちで見られる例のひとつ。
『弦振動の伝達』という事象を最優先で考えることが大原則。

実はGOTOHでも10.5mmピッチ新規機種としてNS510Tシリーズも追加。どうしても10.5mmでなければ満足しない方は、現状ではこれに一式交換することが近道と思われる。
私としては11.3mm/10.8mmで満足な製品があるので、特に指定されない限り使うことはないだろう。
現在流通している規格は以上挙げた3種類に限られる。それ以外のピッチ品は存在しないとまで言い切れないが、私にとっては既に必要充分なのでどうでもいい。

10.8mmピッチで W V 2 S B というブリッジも見つけた。
使用する弦によって、またセッティング次第でもオクターブ調整後にこの通りの並びになる保証はどこにもないにも関わらず、プレート及びブロックの弦セット穴を一列にしない余計な細工はともかく、こちらはチェックしたいところ。
またこのブランド(非常に多く検索されているが私はこれ以上解説していないため伏せる)には複数の製品があるにも関わらず、モデル名は一切無視されている。ここを確認しないと目的の情報は効率よく得られないのではないだろうか。例えば テ レ について知りたいのに「Fenderギター」で探すようなもの。

サドルの素材はやはり鉄が好ましい。プレスした鉄板もしくは削り出し。これらの違いは「鉄板を叩いた音」と「鉄の塊を叩いた音」の差、イメージできないのであれば実際に交換して自分の耳で確認するしかない。
指板材のメイプルとローズウッドなどの違いを、見た目と手触りだけではなく音色としてのこだわりがあるならばこちらの要素もそれに等しいと思う。他者の文言を聞くよりも試して違いを感じていただきたい。アンプを通さず生音で比較するだけでいい。
ブラスの場合は上等な金管楽器やシンバルに使われる(組成の明らかな)一次材であれば悪くないが、切削クズを固めた柔らかい二次材では加工しやすい利点しかなく亜鉛合金と変わらず音が濁る傾向。
ストリングガイドが2つに増えて3点止めネック仕様となる'72年以降、ストラトのブリッジはサドルだけでなくプレート/イナーシャブロックもコストダウン目的で一体の亜鉛合金製に変更された。マウントネジ穴が点ではなく不確実な面で接触している上にアーミング操作を繰り返すことによって磨耗するほど脆い材質、当然のことであるが私は一切評価していない。

GOTOH GE101TS相当のブリッジ。
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フルサイズとも言えるイナーシャブロック。

画像の左から11.3mm、10.5mm。サドルのピッチと同様、マウントネジのピッチも異なる。
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プレス加工のサドルはGOTOHのセットでもよかったが、Raw Vintage 11.2mmタイプを選択した。
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余談。
各種パーツを『ミ リ 規 格、イ ン チ 規 格』と呼んでいるのも非常にいい加減な表現である。
〜規格とは正しくはネジ規格(径とネジ山ピッチ)の違いであり、アームや各部のネジ部分はともかくそれ以外のパーツに関しては主観に過ぎない。ましてや『ミ リ サ イ ズ、イ ン チ サ イ ズ』なんてのは意味不明もいいところ。単位の違いは面倒ではあるが計測し換算して把握することが当たり前。
Raw Vintageサドルについて紹介のつもりだろうと思われる「11.2mmはUSA、10.8mmはJapanに」と非常に乱暴で不親切な記述も見受けられた。
サドルピッチが異なると互換性はないことは指摘した通り。10.8mmサドルは10.5mm規格ブリッジには適合しない。
更にオクターブネジが中心にセットされていないタイプにも交換不可なのは言うまでもない。
個々のモデルで装着されているブリッジが異なり、その仕様を確認しないと適合するものは選べない。
幅を計測するための「ノギス」は、自分でいじるならドライバーと同程度に必須な道具ではあるが、持っていなくてもおよそのサドルピッチは知ることが可能。
1個のサドルに物差しを当てても分かりにくく、この場合は並べた6個分の幅を測って割り算する方が誤差も少ない。
その結果が10.7mmにも満たないなら、Raw Vintageサドルは使えないので諦めてもらうしかない。

組み上げたブリッジは実測350gと50%以上も重量増になり、この違いは些細なレベルとは言えないだろう。
当然、音質も違ってくる。
オリジナルに準じた6点止めシンクロトレモロユニットとして購入するのであれば、GE101TかGE101TS、GOTOHのOEM品でオクターブ調整範囲を広く改良した S P - S T - 0 1も適してると思われる。
高精度が売り文句のカラハム、こちらについては現物をチュックしたことがないので不明としか言えない。
  


「ブリッジユニットの互換性」と検索されても、以上述べたように各製品でマウントネジ穴の位置が異なり『埋めて "サドルの調整範囲を弦長に合わせ" て開け直す』ことが前提である。更に形状が異なってる場合もあるので現物合わせで熟慮の上で慎重に対処することが不可欠。
ボディにマウントするネジの位置と下穴径は自分で的確に判断し施工することが求められる。他者に尋ねるものではない。
2点支持タイプであってもスタッド穴径だけでなくその間隔も異なるモノもある。似て非なる他社製品を、穴位置もそのままでポン付け出来ると安易に思ってはいけない。
ボディ側を加工することが前提にあり、ブリッジユニットそのものを加工せず載せて弦を張った時点で弾ける状態に持って行けるのであれば、私の判断では『互換性がある』と見做す。収容のためのボディ加工が大変なスタインバーガーのユニットでも、更に面倒な「レスポールにFRTを」というのも互換性アリ。
必要なスキルは「最適な位置を正確に割り出して適切な加工を行う」ことであり、検索する前に手元の現物をよく見ても答えが分からないようであれば(ブリッジに限らず)手を出すべきではない。
自分の限界を知ることも大切、という教訓は検索するまでもなく分かっていなきゃいけない大きなポイントだと思うがどうか。

「ト レ モ ロ ブ ロ ッ ク」で検索される方も増えたようだ。
一般にブロックとは単体の塊のことで、複数の部品を組み立てた(=分解可能な)アッセンブリではない。
交換用パーツとして流通しているパッケージ名称はブリッジユニットまたはトレモロユニットであり、上述したようにボディ内に収まる「イナーシャブロック」という単独のパーツとしてある以上、もしユニット一式を「ブロック」と呼んでいるのであれば話が通じないのではないだろうか。
イナーシャブロックだけを交換したい場合は、弦を通す貫通穴とサドルピッチのズレ具合が許容範囲であれば流用可能とはいえ、3本の固定ネジ及びアーム穴位置が異なると互換性はなく、単体で入手したところで徒労に終わる可能性もある。


#2へ続く】
posted by bluesmith at 12:45| 楽器 | 更新情報をチェックする