2013年12月03日

【F Jazz Bass】のチューンナップ

依頼されたのは、現行モデル "CLASSIC SERIES '60S" と思われるジャズベ。
予想していた通りの作りで、輸入品とはいえやはりコストパフォーマンスが良くない印象は拭えない。

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他のエントリと同様に、ここに記述した内容も本来の姿に戻すことが目的であり、「改 造」とは認識していないので悪しからず。
にも関わらずそのような検索が非常に多い。検索サイトでサジェストされてしまうらしいが私にはどうしようもない。
内容は主に「修理」であるから、おそらく期待には応えられそうにないと思われる。
こちらに提起しているので、そもそもの定義からよく考えていただくことを希望する。

メニューは今までと同じ、オリジナルの設計思想に則った「快適に鳴らす」ためのセッティング。
まず気になったのはネックの反り具合。割と大きな順反りであり、更にネック仕込み角はマイナス方向。
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一見しただけでボディに対してネックが起き上がってるのが分かる。ボディトップ面とネック指板面が±0(平行)になるように修正する必要がある。

弦高を下げ気味にしてあるが、仕込み角による影響でブリッジサドル高も低過ぎる位置。
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ブリッジ位置を確認。左右方向は合っているが弦方向はネック寄り、オクターブピッチを合わせた状態で1弦サドルの先にネジが1cm以上余っている。
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エンド側に平行移動させるため、現状の1弦サドル位置もマーキングしておく。

コントロールキャビティ内、三角形の鉄板クサビで真鍮板を固定してあるが、金属など通電素材の "箱" で囲うからこそ外来ノイズから防ぐシールド効果が有効に作用する。金属板の底面にアース線をハンダ付けしたところで側面が無防備なままでは不完全。
また、量産品にありがちな長過ぎるリード線が目立つ。配線において適切な長さというものがある。
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コントロールプレートのネジ穴をよく見ると分かるが、ネジ頭が収まるテーパーが裏側に。プレートが裏返しで装着されていた。

初期オリジナル仕様の通り、配線ではなくR-PUからボディトップに細い真鍮板を這わせて弦アースを取っている。
ブリッジ裏側を見ると在庫管理用と思われるシールが貼ってあった。2つの金属パーツが接触することでアース接続されるはずのものが、組立前の都合で不完全な状態に陥っている。組立工に知識を要求する以前に、こんなことが平気な管理責任者を疑う。
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この真鍮板の厚さによりブリッジが片浮きしてしまってプレート全面で密着しないのが気持ち悪い。ここに限らずなるべく広い面積で均等に密着している方が弦振動伝達には有利であり、隙間があると汗が滲みてサビの原因にもなりかねない。
飾っておくだけならこのままでも構わないが、実用的な道具として使うために現在の標準仕様に改修して解決する。ブリッジ下からR-PUキャビティまで穴を貫通させ、アース線を通して確実に接続する。

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各パーツを外した状態、キャビティ内に "YAMANO" の文字があった。

アルダー2Pのボディ、きちんとセンター合わせになっているのは気持ち良い(実は'60年代オリジナルのボディでは敢えてセンターから外しているのだが…)。
しかし、ボディが太った(木は動くのである)のかピックガード取り付けネジ穴が合致しない。一度埋めて開け直す。同時に1弦側フィンガーレストも撤去するのでネジ穴も埋める。

慣例通り、ネックポケット内に日付。
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ネック側に貼られた管理シリアル記載シールの厚みで凹みもあり、薄くもない塗膜との段差もある。ネックとボディを密着させるために平滑に仕上げる必要がある。

ネック側の日付。
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塗装されているこの状態でネック厚をチェック、16F地点がエンド部より1.2mmも厚い。本来の設計としては同じ厚さ(=平行)でなければならない。仕込み角の不具合はボディ側ネックポケット底面が傾いてるのではなく、ネックが原因だと判明。塗装前の時点で設計図面と異なる形状に加工された理由は不明。
仕込み角変更の簡易な修正方法として、ネックエンド側にシムとして薄い板を挟む手段もある。
その厚さはケースバイケースであり、手間は掛かるが組み込んで確認しつつ最適な状態に設定する。
しかし私は一時的な確認のためにしか使いたくない。
その理由として、通常の市販品においてネックポケットは左右方向にルーズなサイズに加工されているため実質的に底面のみでしか接していないのに、その面積が減ることで密着度が更に低下する。
その結果、弦振動伝達効率の点で不利になってしまうから。
またネック固定のためネジで締め込むことでシムが当たっている箇所だけその厚さ分ネックが押されてしまうので、長期的には最終フレット付近が起き上がってしまう原因にもなる。柔らかいボディ材では逆に陥没してしまうこともあり、どちらにしても肝心なネック仕込み角を維持できない。
底面を正確な平面に削って最大面積で合致させる手間を惜しむべきではない。StewMacにはギター用及びベース用として専用シムが用意されている。厚さではなく角度で選択できるのがミソ。
シムとはネック仕込み角を変更させるためのもので、ネックそのものの反り具合を調整するためのものではない。これによりネックに働く弦テンションも変化するので影響はある。目的に見合った対処方法があり、その効果と混同してはならない。

ネックはヘッド面を残して塗装を剥がしてオイルフィニッシュ。ラッカー塗装なので剥離剤が効いて楽。
ポケットに収まる底面部分をエンド部の厚さと同一になるまで削り、ボディに仮組して仕込み角が±0かどうかチェック。ボディ側ネックポケット底面を斜めに削る必要はなさそうだ。
仕込み角が適正になったら、ネック/ボディのセンターが合致するようにネックポケット左右にメイプル突板を貼って修正。先に低音側を決めてから高音側を詰めてタイトフィットさせる。

ナットも例によって底面にRが付いたプラスチック。この部分こそフラット仕様に戻し、面で密着させるべき箇所だと思う。目視不可能なRに合わせてナットを加工するのは非常に困難。指板Rと平行だと仮定したところで経年変化による影響もあり、厳密な密着度合いの確認は難しい。ナット側Rをやや小さくして、見える両サイドだけ合わせるような真似はしたくない。
先にナットスロットを平面に修正してから、用意した牛骨材ナットのサイズ合わせ。3つの平面が密着するように削る。
ストリングガイドはローラータイプに交換。
ペグもプレートが変形している。裏側にカシメ部分が出るタイプでネック側にその凹みも設けながら、位置が合っていない状態。分解してクランプでプレートの変形を修正、グリスアップして組み立てる。
ペグブッシュも一度外しておく。浮いてはいなかったがネック側の穴には面取りというには大き過ぎるテーパーに加工されていた。

ヘッドロゴのデカールは塗膜の上に貼ってあり、傷んで欠けてしまっている。これ以上の剥離は避けたいので修正後にクリアラッカーを吹いて研磨。
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その後にペグブッシュをツライチまでクランプで圧入し、裏側から瞬間接着剤を流して固定。
ペグのネジ穴も埋めて取り付け位置を確認、カシメがきちんと収まるように修正してからネジ穴を開け直す。

キャビティ内、接触不良の原因にもなりかねない真鍮板は撤去し導電塗料でシールド。PU下のクッションもスプリング内蔵タイプに交換。
コントロールはバランサー追加の要望。
バランサーは500kΩ2連MNカーブ。マスターボリウムとトーンも250kΩのままではインピーダンスが低下してしまうのでどちらも500kΩAカーブに交換。
よく知られた応用回路であり、「配 線 図」は記載しない。
コンデンサはセラミック0.05μFだったのでフィルム0.068μFに交換してみた。値は変更したが聴感上ほぼ同じ効き方で済んだ。円盤形状が多いセラミックは色付けする傾向があり、オーディオアンプの信号経路では「歪みっぽくなる」と敬遠されていて私も好まない。
ジャックを直接プレートに固定していてアースラインが省略されているので追加配線。ライヴ中にジャックが緩んで音が出なくなるトラブルの予防。作業工程上は「緩まない」ように締め付けるのが原則であるが、プレイヤーがどう使う(放置する)のかまでは予測不能な部分もある。なので可能なことは手を入れておくべき。
前後するがジャックのカシメ部分にハンダを流し、ホット側には接触防止のためにチューブを被せた。
導電塗料面はラグを介してアースに接続、プレートの裏表を確認して取り付け。
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メッキがくすんだブリッジは同じ形状の、スパイラルサドルタイプに交換
ネック仕込み角をデフォルトに戻したことでサドルもこんな感じに収まった。この高さが正常。
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仕込み角を変更したことでネックに加わるテンションも元とは異なり、当然トラスロッド調整も必要。また、元と比較しプラス方向に持っていくことで(ヴァイオリン属の弦楽器のように)弦テンションに対して強くなるが、同時に低音域が不足傾向になって音響特性にも影響する。この変化はシムを入れて再調整すると違いが分かるはず。
ネックのコンディションが一番の気掛かりであり、様子を見ながらトラスロッドを調整しても残念ながら限界。
この「限界」とは、これ以上はロッドナットを締め込めない状態。
ロッドナットはドライバーを差し込む十字溝(または六角レンチ穴)部分を確保するため、内側に切られたネジ長は外見よりも短く、ロッド先端がつかえてしまったことによるもの。本来は固定されているはずの、調整部分の反対側が甘くなりロッドがブリッジ方向に移動してしまったとも考えられる。無理に締めようとするとロッドがネジ部分で破断したり、ネック内部の固定部分が破損する。ワッシャーがサイズ的に適合するのであれば対処もある程度は可能な場合もあるが、その厚みの分だけネックエンドからロッドナットが飛び出してしまうことも考慮しなければならない。ヘッド側で調整するタイプであってもロッドナットが取り外せないネックではこれも不可能。
今回はネックへの負担を軽減させるため細いゲージの弦を用意。
ダダリオの.040〜.095のセット、これでなんとかバランスしてくれた。

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勘違いして欲しくないのだが、トラスロッドはネック反り防止の芯棒ではない。
弦が張られた状態を確認し、外してみると比較して逆反りになってることが分かるはず。
ネックは細い木製のため弦テンションの加減により動いてしまうから、逆方向のテンションを掛けるため緩やかに曲げた状態で仕込まれている。調整ナットで締め込むと直線に近付くことで矯正し、弾きやすい状態に追い込むためにの仕掛けに過ぎない。
ざっくりと順反りのままであれば「こんなもんだろう」と認識しにくいが、季節(温度と湿度の変化)によってもネックは動く。ストレートに近いネックセッティングにしていると、しばらくぶりに弾いてみたらビビりが生じて「逆反り?」と感じられることもある。

トラスロッドはオーナー自らによる調整が不可欠なもの。弦交換と同レベルの義務と考える。
だから「買ってからロッドは触っていません」などという申告は単なるサボりであって、売却時のアピールポイントでもなんでもない。今回のジャズベもそれがアダとなり、調整不全に陥ってしまった例のひとつ。
木製のネックというものは弦テンションとバランスさせたまま長期温存しておくことにより、徐々に『ネックが固まる』ということを理解して欲しい。
量産品のトラスロッドは製造時の規定に合わせるだけ。組み立て後に弦を張ってチューニングはしても、トラスロッドナットには触らず未調整で出荷されている。配送後に陳列する販売店でも同様。そのため購入時点での確認と以後の定期的な調整が必須なのである。
手加減を知らずグルグル回して壊してしまうことを恐れてなのか調整しない方を多く見かけ、楽器が可哀想に思えてならない。


納品後にオーナー氏から質問があった。
「.045ゲージの弦を張りたい」
結論から言えば、『順反りが許容できるならどうぞ』としか言えない(半音あるいは1音下げチューニングなら合わなくもない可能性もあるが…)。
既に述べたように私の判断ではNGだったので、最終手段として細いゲージにしてバランスを取った。
順反り傾向が強くなるに従って弦がネックから離れて行くため、ネックが受けるテンションも更に強くなってしまうことはお分かりだろうか。調整しなかったことによる悪循環、時間は取り戻せない。
限界まで調整した状態でまた順反りにしてしまうのは、瀕死の状態だったネックをせっかく延命したのに殺してしまうことに等しい。
弦を優先してなお順反りも解消したいのであれば、確実な手段は "ネック交換" しか残されていないと思った方がいい。信頼出来る新品のネックの方が確実で安い。

トラスロッド交換(仕込み直し)」なんて、どこで耳にしたのか分からないがそもそも前述した構造を知らないが故の勝手な妄言に近いと思う。調整可能なことさえ知らずに「ネックが反ってるみたいだから交換しなきゃ」と思い込んでいるのかも知れない。
言うのは簡単でも、実際の工程としては指板剥離→ネックを破損させないようにロッド撤去→当たり調整(ロッドが効くように木工補修)または交換→埋め戻し→指板接着→外観補修と大規模な改修になってしまうだけでなく、その途中で修復不能と判断せざるを得ない場合もある。作業上の問題が無かったとしても事後の保証を考慮すると費用は新品ネック部品代金の2〜3倍どころでは済まなく、そんな料金からしてもトラブルになる可能性もあるため、大抵のショップで断られるだろう。
仮に「保証なし」で工賃\10万としても私は辞退させていただく。
このような難度の高い(面倒な)作業に関して、説明だけで理解を得られるとも思えず。
簡単な調整程度でも実際の作業に立ち会い、詳しく解説を交えながら見てもらう…のが本来あるべき現場だと思う。
某社のサービスサイト『◯◯袋』など、自ら状況を考察することもなくネット検索だけに答えを求めるような方を多く見かける。解決に向けて考えなければならない事項まで他者に丸投げする、安直な姿勢に頭を抱えざるを得ない。非常に残念である。

参考:
多彩なオプションで細かい仕様も追加指定可能なWarmoth
デフォルト仕様しかないが割と格安なStewMac
日本製ならこちら


【2015/06/30追記】
ebayや海外通販専門サイトでは以前から多量に出品されていた中国製ネックなども、ようやく日本のAmazonに進出したようだ。金物やPU他電装品はちょっと前から扱いがあった。下請け工場として上納するだけでなく自らがエンドユーザに向けて直接売りたがる、あちらの国ではよくある話。
関連商品として、通常は業販向けとして流通される本家の交換用パーツと思われる並行輸入品(個人間の売買ではないのでおそらく正規品)まで見かけた。
特に中国製のネックは安い価格が魅力的に映り、「これを買えば直せる」と思い喜んでしまうのも分からなくはない。が、そんな安易な考えは禁物。
ポン付けしようとしても結果として「それらしいモノ」止まり。
当然のことだが、手に入るものはそれっぽい形をしただけの素材で、製品そのものは無保証と思った方がいい。同じ樹種と提示されていてもWarmothやその他専売業者よりも相当安価なのは人件費だけに限らずそれなりの理由がある。
木工作業(および無塗装品であれば塗装作業も)の経験があって、ある程度の工具を手元に揃えた上でようやくスタートラインである。そして最低限の前提として勘所(ここで述べたものや他エントリの内容はそのごく一部に過ぎない)を熟知し、状況に応じた対処方法の理解が必須。
それでも、ダメ元の覚悟で買っていじりながら理解するための "教材" として割り切れるならいいのかも知れない。
大体、名称とその画像の仕様が一致しないものもあって、送られてきて開けたら希望通りではなかった…なんてことも充分に予想される。Amazonの規約にある返品保証も機能するはずとは言え、どんなトラブルに出くわすかも分からない。それを含めて自己責任であることは当然と割り切ることを要求されるもの。
品質的な状態や仕様/規格的な問題点なども一切未確認なので、私もリンクを貼ることは遠慮させていただく。


ジャズベの弦アースについての検索が呆れてしまうほど多い。
数が限られるオリジナルの初期仕様モデルを見て「自分のベースにはトップに真鍮板が着いてない→アースされていない!」と早合点してしまうのだろうか。私にはこれ以上のことは分からない。
確実性の点で劣るため不具合の要因ともなってしまう方法であることは上述の通り。
ボディ内ブリッジ下からコントロールキャビティまで貫通穴を開け、アース線を通してブリッジと接続する方法が現在では当たり前。他社製を含め、プレベをも含むほとんどの現行モデルはそうなっている。安価なWJBも、更に安いプレテクもその方法だった。外見だけ似せた昔の劣悪コピー時代ならともかく、弦アース不備のジャズベが流通しているなんて考えられない
テスターがあればブリッジとコントロールプレート(またはジャック)間の導通チェックを、持っていない場合は弦交換の際にでもブリッジを外して確認されてはいかがだろう。アンプ直で鳴らしても分かるはず。
ジャズベに限らないが「初期型というだけでありがたがる」ような信仰とでも言うべき思い込みはファッションに過ぎず、道具としては無意味ではないだろうか。現在のポピュラーな奏法では好まれない「ブリッジカバーとPUフェンス」、また各PUのボリウム/トーンを重ねた「スタックポットコントロール」と同様にノスタルジックなものでしかない。メーカーとして試行錯誤の上で毎年マイナーチェンジを繰り返していった経緯をよく考えていただきたい。
そこまで理解した上でもまだオリジナル仕様に戻したいと思う方がいるとして、あとは好みの問題なのでご自由に。


ペグへの弦の巻き方について。
弦自身を密着させて摩擦抵抗により緩みを抑えるために1周以上巻く。
2巻き目以降はその下に巻いて行くのが常識であるが、弦を(切らずに)ポスト有効長を目一杯使って "多く巻く" ことを安易に無条件に指南(あるいは強制)される方をよく見かける。
ブリッジサドル上での弦の角度と同様に、ナット上の角度でも弦テンションは変わる。
角度を付けた方向に押さえつける力が働くため、水平に近い方が緩くなり音的にもサスティン優先になる。
ここで大事なのは「弾き心地=テンション感」ではなく、出音に影響する弦のテンションそのものだということ。
ナットから離れた1弦2弦、これはストリングガイドにより角度が決まるので巻数は影響しない(とは言えオリジナルではガイドが直付けされて弦位置が低いためテンション増加傾向)。
特にナットに近接した4弦をグルグル巻いてしまうことは避けるべきである。
太い弦はナット上で曲がりにくく、真横から見て4弦のラインがふくらみ1F付近で弦高が上がってしまう例も多かった。またナット-ペグ間で弦が指板上端の角に当たってしまうのも正しい状態ではない。
テンションバーを設置するのも弦を緩い角度にするように高めならまだいいが、ナットから近い位置で低くし急な角度にしてしまうのは間違い。
弦の張力(=テンション)と釣り合うことによりネックの直線状態を維持するのだから、その負担を減らすためにもテンションは低くあるべきなのである。

弦の反対側で言えば「裏通し」も同様。ある機種で好まれるようだが、サドルに接近した弦穴によって弦が急な角度にセットされることが大きく影響する。それに対して「サドルからボールエンドまでの弦の長さが違うから云々」との反論らしき説も見かけた。影響はゼロではないが、ヘッド側1弦と4弦の差ほどもあるならまだともかく、2〜3cm程度の差なんて弦全体の長さから比較して誤差レベルでしかなく、同じゲージでも他社の弦に替えるだけで体感的には相殺されてしまう。

オリジナルブリッジのコンセプトを受け継いで3/4弦のボールエンド位置をずらした "Step Bass Bridge" というのもあった。
また裏通しであっても、太い弦をサドルから離れたエンド寄りにセットできるように作られた楽器をどう解釈するのだろう。

ナット及びサドル上で弦が急角度な場合は弾いた時に疲れを感じやすいはず。
そこから「テンション感であり張力ではない」と誤った認識をされてる方も見かける。
ベクトルを理解する模式図を書かなくとも、楽器を寝かせた状態にして弦をつまんで持ち上げてみると、固さ(=重さ)で分かりそうなもの。
張力そのものが強い状態では、弦高を低くしていても弦を押さえる力が過大になる。同時に弦が振動する幅も小さくなり、音量を得ようと更に力んで弾くことになる。その右手の力加減がまた左手にも連携してしまうループ。
その結果、強弱が付けにくくビブラートなども困難になり、弦の寿命とフレットの摩耗を早めることにも繋がる。ネックへの負担だけではなく、奏法を含め楽器全体への影響がある。

数値的な解釈を拒むのも自由ではある。しかし、その前に聞き齧りの言説ではなく自らが体感したもので考えて欲しい。楽器なんて物理法則の塊のようなもの。
この他にも少なくない、数値と割合を無視した極論的でもっともらしく聞こえるような言説を、根拠も怪しいまま(感情ベースで)信じるのは "宗教" ではないのか。
それでも食い下がるなら何も言うことはない。

テンションを増加させる方向にセットする目的は何か。
弦周り(ネック、フレット等)が適切に調整されていない場合、テンションが低いとビビり音を発生しやすく、生産ラインでの歩留まりに影響しコストがアップしてしまう。
メーカーとして大問題であるから、それを回避する手段ということが考えられる。
本来は逆で、音のため弾きやすさのためにテンションを低くしても問題が発生しないようにセッティングを詰めることが望ましい。
特にベースでは重要なポイントであり、手を抜いていい場所ではない。
これは今回の処置であるブリッジ位置変更やネック仕込み角修正の目的でもある。
ペグへの巻き数、通常は1巻き〜2巻き弱程度にしている。これでビビりが気になる場合はその原因を追及。
ネックの反りやフレットの摩耗によるものが多い。
弾いて音出しして納得出来る場合なら好みで巻き数を増やしてもいいとは思うが、私は勧めない。

 
posted by bluesmith at 12:00| 楽器 | 更新情報をチェックする