2015年06月03日

【Swinger レプリカ】#1

"Musiclander" と呼ばれることもあり正式な名称もない一時的なカタログ外モデル、その存在を知ってから欲しいと思っていた。
不人気機種の在庫整理のため急造、にしてはアンバランスさを感じない非対称デザインのボディと三角形状のヘッドが強烈な印象を与える。
CBS期以前のメジャー機種とは違ってオリジナルも手が出ない価格とは思えないが、その成り立ちからして生産数が限られており有名なショップでも見かけたことはなかった。

ならば作ってしまえ、とラインナップに揃えているWarmothから材を購入する予定も後回しになっていた。


【来歴】
オリジナルの経緯については書籍「フェンダー大名鑑」に詳しく記載されている。その昔は諸説あって混乱していたが、この記述で間違いないだろうと思われる。またその他機種についても詳しい解説が掲載されている。


ルーツを遡ると1956年に登場した1PUの "Musicmaster" と2PUの "Duo Sonic" 。スチューデントモデル(廉価機種)として大々的に「3/4サイズ」とアピールした22.5インチスケールに小型で薄いボディの組み合わせ。
その後 '64年に独自構造のトレモロユニットを搭載した "Mustang" へ発展、その仕様に合わせピックガードからコントロールプレートを分離しラージヘッドに変更して3機種の外装を統一。
これらは24インチスケールも選択可能となったため多くの人に支持され、短い22.5インチは売れず。
'69年に、それ向けにストックしていたネックをリサイクルするため工場で「現場の判断」により300〜600本作られたモデルらしい。ヘッドデザインまで変更されてることも、ブランドイメージを気にするCBS本社R&D部門が関わっていない証拠だろうと思われる。
ボディの方はMusicmaster用のものを切って加工した形状、また同様に不人気機種だった "Bass V" のボディも流用(こちらはピックガード下にスプリットコイルPUのルーティングが残存)された。
画像で見る限り、1弦側ツノの形状も異なるタイプもある。


【メイキング】
さて発想を変えて、既存製品からデッチ上げるには…。
ボディはMustangのを流用し加工するとしても、純正モデルでは "あのブリッジユニット” が大問題。
サドル位置ががズレる構造的欠陥があって、弾いてるだけでチューニングも合わなくなるのでそのまま使う気にはなれず、ハードテイルに変更するにしてもボディトップにハの字状にスプリングキャビティが彫られていて、埋めたところで塗装面から継ぎ目が見えてしまう。突板を貼ればキレイに消せるのも分かっているが、それではイマイチ納得できない。
本家系統のブランドでは価格的に大袈裟になり面白味に欠ける。
そう言えば、格安ブランドのコピーモデルにはシンクロブリッジを採用したものがあったと思い出し、該当する製品を確認。

A:24インチスケールでラージヘッド、JMタイプのブリッジ。
B:24.75インチスケールでシンクロ、ブランド共通のヘッド形状。
C:25.5インチスケールでシンクロ、これはネックが長く不恰好に見える。

サウンドハウスで他のパーツを探してるときにPLAYTECHにもラインナップされていたのに気付いた。
ミディアムスケールでヘッド形状も本来の元となったラージヘッドとは異なるものの許せる。
その画像とWarmothボディ画像を重ねて比較、特徴的なアウトラインは削り落とすことで再現可能だと確認。
材料費として総予算も¥50,000-以下で済ませられる(だろう)…、ということでBM300を購入した。
レビューには「軽量」とあるだけで樹種が不明だったボディ材、材木商が「ホワイトウッド」と称して取引している針葉樹ではないことは先のエントリにて考察した。アルダーにこだわりたい気持ちもあるが、取り敢えずはこのポプラでもいいだろう。
4色展開の色も気に入らないので加工後に塗り替えを前提、ホワイトパール柄のピックガードが似合うカラーにしたい。

後はセオリー通りにパーツを交換してグレードアップ。
オリジナル通りの完コピも意味はあるものの既にスケールが異なっていて、独自デザインのブリッジも入手しにくく好みでもないので面白くない。
金物の仕様としてはアーミング奏法を考慮してGOTOHの2点支持ブリッジ旧モデルOGE1088Tに、ペグは定番SD91-MGの白いプラスチックボタンでオリジナルに合わせた仕様。これらは過去に組んでいたゴールドパーツを再利用する。手で触れてしまう箇所は金色が薄くニッケル色になってしまってるがまだ使える。
シングルコイルPUを2発の仕様にし、独自ポイントとしてオリジナルとは逆向きの角度で両方共1弦側をネック寄りに傾けてセット。
ゴールドのコントロールプレートが入手不可なので自作する。先祖返りっぽくピックガード材から切り出すか、アルミ板に突板を貼るか。

【ボディ加工事前考察】
左がBM300で右がWarmothの塗装済みボディ、中央は比較のため合成した画像。
Sw-body1b.jpg
更にオリジナルの画像と見比べると、Warmothのボディは6弦側ツノが長い。これはスケールに合わせて変更されたものと考えられる。1弦側も同様にカッタウエイが深目。この形状では内側に削り込むためスイッチ部分に影響することが判明、一度埋める必要がある。

画像からアウトラインを抽出して型紙を作成。プリントして原寸まで拡大コピー。
ジョイント部分はセンターから位置を割り出してネジ穴を開け直してから、裏側を1弦側が6mm薄くなるように斜めに削り込む。カッタウエイもそこから繋がるラインに修正。
トリマビットも取り寄せた。
ベアリングが刃の下に装着されたものは以前から持っているが、ラインをトレースするため上に着いたものが必要。また外周の角を均一にトリミングするため「ボーズ(片ギンナン)面」も不可欠。
ストラトの純正図面ではRが1/2インチ(12.7mm)になっている。しかしStewMacの '63モデルボディでは7/16インチ(11.1mm)と微妙に食い違う。
国内において12.7Rは入手可能、しかし11Rなんて特注しないと無理。
そこで9.5Rのビットで加工して様子を見、違和感があればゲージを作って手で修正することにした。

  

【ネック】
部分的に仕上げが荒いまま残っている指板を研磨して、エッジが薄く削られたフレットも打ち直す。この際ついでにポジションマークもパーロイドから貝材に変更する。
ポリエステルにしては厚くない塗装、#150ペーパーで剥がす。
16F位置と最終フレット位置での厚さを計ると厚みが異なっている。指板面と平行に修正し平面を出す。
指板両サイドに定規を当てると途中が膨らんでいるので直線に修正。
ペグ穴間隔はほぼ24mmなのに穴径が10mm以上ありコンバージョンブッシュでは緩くてNG、更に3弦ペグ穴センターがネックセンターに合致せず6弦側に寄っているのが気に入らず埋めて開け直すことにした。ペグネジ穴及びネックセットネジ穴も埋めておく。
特徴的なヘッド形状にするため1弦側を直線カットしてからメイプル板を接合。オリジナルはラージヘッドをカットしたもので角が6弦ペグの真横に位置してるところ、5弦ペグ手前になって1弦側ナットからのアウトライン曲線も緩いが、この方がスマートなイメージに見えなくもない。
ナット裏のライン。ヘッド折れしにくいようにとの配慮なのか、ボディ方向に過剰に膨らんだ形状になってるのが中国製ネックによく見られる。左手のホームポジションとして握ると違和感があって好ましくない。
他機種と比べるとまだマシだが、ヘッド裏の立ち上がりラインをセンターに向かって90°弱のV字に修正。
R0011992c.jpg

表面にバーズアイメイプルの突板を貼り、メイプル全面をオイルフィニッシュにしておく。
R0012015b.jpg

フレットを慎重に抜き、それでも崩れてしまった溝のエッジを瞬間接着剤で補修。
ポジションマークを撤去する。アクリル系と思っていたがラッカーシンナー程度ではビクともしない。熱で溶かすつもりでホットナイフを当てると粉っぽく崩壊した。穴のエッジを壊さないよう慎重に作業。

φ6mmアバロン材のポジションマーク、1セット20個だったので10個を選別。


よく混ぜて硬化してしまう前にエポキシ接着剤を入れてからツライチまで圧入、はみ出た接着剤はラッカーシンナーで拭き取り、硬化するまで放置。
指板Rは350R位なのでナット側を240Rにしてコンパウンドラジアスに修正。
R0012016a.jpg

フレットは以前購入していた、太くはないが高さのあるタイプ「Medium/Higher」表記のStewMac #152を使う。

【ボディ】
ボディもポリエステル塗装、ネックの塗膜よりも分厚く#150ペーパーでは時間が掛かるので#60に変更。着色層を剥がしたら赤と黄色のクリアカラーで見える部分だけを覆うように木目シートが貼られていた。
R0011987a.jpg

ボディのセンターを型紙と見比べながら割り出し、ブリッジキャビティとピックガードの位置を確認。
ネックセットプレートの規格も異なっていたので穴位置を修正するため埋める。
R0011988a.jpg

キャビティ修正、トリマベースを直線移動させるガイドにするためボディ表面に定規を両面テープで貼ってから加工する。
そのテープを剥がす時に表面の木目シートが剥がれた。シーラーを含んでいても薄く、その下に白い紙が裏打ちされているのが確認できる。
R0011989a.jpg

ノミでペリペリと剥がして行けるのは楽だが、密着していないということでもある。
裏側もこんな感じで進める。
R0011986a.jpg

サイド面は削り込むので塗装はそのまま。
表裏両面を剥がし終わるとボディ厚は43mm、トレモロユニットはフローティングセッティングの予定なのでブロックも短くせずそのまま使えると判明。
トップ側キャビティは各部塗装を落とし、プレートにSwitchcraftジャックを装着すると干渉するコントロール部分を含む形状を修正。
バック側キャビティもセンターを基準に斜めにズレて直線が出ていないのは気持ち悪いので修正。

当初はベニヤ板でテンプレートを作ってジグソーで切断しようと考えたが、複数作るつもりもなくもっと簡単に型紙から直接ボディにラインを写し取って加工する方法にした。下部のラインはそのまま鋸では切れないので穴を開けて繋ぐ。
ネックポケットは6弦側を僅かに削っただけでネックのセンターが揃った。1弦側にメイプル突板を貼って合わせる。
アウトラインはオリジナルのままでもよかったが全体的にWarmothの形状をトレースした。1弦側カッタウエイはネックエンドまでの深さになった。
R0011996c.jpg

切り落としたボディ材から、セレクタスイッチが収まっていた部分に合わせて楕円に削り出す。
フィラーを混ぜたタイトボンドを隙間に充填。虫穴もあったので埋めておく。埋め材をクランプで奥まで押し込んで乾燥させる。
R-PUからセレクタスイッチへのルートも外側が干渉すると思われるので幅を狭くするため同様に埋める。
PUキャビティもマウント位置変更に合わせて修正、ほぼP-90サイズとした。
R0012013b.jpg

ネックジョイントネジ穴を開けてから、プレート下部分を斜め平面に削り曲面で繋げる。
トリマに9.5Rビットを装着して外周角をトリミングし、サンドペーパーで均す。
テレのような角張った感じはせず、このRで満足なのでOK。
セレクタスイッチの位置を決めて最小限のサイズで彫る。
表面をフィラーで目止めして、導電塗料を塗るキャビティ以外の全面にシーラーを、最初は生地に吸い込むので刷毛塗り。
乾燥後に導電塗料を塗る。
まず先にネックポケットの平面を研ぎ出ししておく。
R0012023d.jpg

【ブリッジスタッドについて】
旧式の2点支持ブリッジであるGOTOH 1088Tと510AT-1(及び同時期の1055T)を設計通りの性能にするためには、ナイフエッジ受け部分が設けられた専用のφ5mm木ネジスタッドが必須である。
よく使われる6点止めタイプの汎用木ネジが適合するはずもなく、2点支持モデルの現行品である510T用アンカー式スタッドはφ6mmで入らず、FRT用スタッドもφ7mmと言うまでもなく。
このように独自規格で専用のスタッドが必要なものはセットで入手すべきで、M5ネジのアームなどその他パーツはまだ適合する既製品があるが、ブリッジ単体だけで売っていても手を出さないほうが無難である。

【無ければ、自分で用意する】
以前使っていた1088Tはスタッドがテンションに負けてやや曲がってしまい、使用不可になってしまっている。510AT-1はブリッジユニットのみで売っていた中古品だった。
ずいぶん前(ストラトの組み立て時)にスタッドだけ入手できないかとGOTOHパーツ専門ショップに問い合わせても既に手遅れ、「無い」と即答されてしまったので、φ5.1mm皿木ネジから加工する。
(個人的には在庫が残っていても不思議ではなく工場にコネがあれば確認したかったが…)
旋盤はもちろん計測用ゲージ類なども持ち合わせておらず、ドリルチャックにセットして慎重に金鋸とヤスリで削り出して同じものを2個揃える。
削って地肌を露出させるので鉄ではなくステンレスを選択。ホムセンにあったネジは45mm長のもので、ボディのスプリングキャビティまでの有効長から全長32mmとし、先端より12mmカット。貫通穴に挿れるため尖らせる必要はなくバリを処理してこちら側はOK。
次に頭の径を7mmまで削ってから、ブリッジプレート穴のエッジと嵌合するV溝を入れる。組み合わせて可動状態をチェック、表面を磨いて完了。
金属旋盤を持っているならまだしも、誰にでもできる容易な作業ではないのはやってみたら実感するはず。こんな手間を喜んで実行するような方でしか、ブリッジ単体のみでの購入は避けた方がいいだろう。

R0012046a.jpg
左からFRT用スタッド、5.1x45mm皿木ネジ、それを加工したスタッド、1088T用スタッド、510T用アンカースタッド。

ボディの弦長に合わせてブリッジスタッド位置を決定。ポプラ材の柔らかさが気になっていたので、一度φ6mmで開けて同寸のラミン丸棒で埋めてからφ3.8mmで開ける。これで下穴内面壁一周の硬さが均等になる。

ブリッジを仮組。抵抗を感じずスムーズに動くが今度はブロックがボディに当たってダウン範囲が狭い。ボディ側をトリマで修正。
6弦側ツノ先とボディエンド両端にストラップピンを配置するため取り付け穴を開ける。


このエントリをアップ後にボディ吹き付け塗装に取り掛かった。以後まとまった時間が取れず、9月末にようやくここまで完了。その他、好みを優先したため既存パーツはそのまま使えず加工を要したり、予想外に細かな手間が掛かってしまっている。それでも依頼品ではないので急ぐこともなく。
R0012337b.jpg

#2(未定)へ
posted by bluesmith at 18:00| 楽器 | 更新情報をチェックする