2017年08月15日

【アコギのフレット打ち換え】

久しぶりにアコギ。
友人経由のイベントに参加した縁で出会い、依頼された主訴は「フレット打ち換え」。
その時点で「摺り合わせ」で済むレベルを越えて打ち換えが必要だと自覚されていた。
ハイポジションは減っていないし指板の状態にも特に問題が見られなかったので、12Fまでなら安価で請け負えると伝えていた。

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サイド/バック/ネックがメイプルで構成された2008年モデルのタカミネ100シリーズ。型番としてはおそらくDMP-100になるのだろう。



フレット関連を含め全体を確認。
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外観上、特に気になるような損傷もなく大切に扱われているのが分かる。それでも打痕や塗装傷はあり、サウンドホール付近など塗装にタッチアップが必要。
ペグはGOTOHの高級グレードである510シリーズのSGL510がデフォルトで装着されていた。弦交換が楽になる「マグナムロック付き」へ変更も提案してみたが今回は見送るとのこと。
今後実際にロック式が必要と感じた場合でも、ロトマチックタイプの構造ゆえにヘッド側の補修不要でポン付けできるからオーナー自身でも交換可能であった。ということで、一度外して金メッキ皮膜に影響させないようジッポーオイルを染み込ませたティッシュで軽く清掃。

弾き込まれて磨耗し、寿命を迎えたフレット。
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まずは内部のゴミやホコリを掃除。硬い毛のハケなども使い、掃除機で吸い取る。
独特なロック機構でマウントされているプリアンプ箱も外れたのでチェック。鉄板製外箱の一部に赤サビがあったので亜鉛塗料でタッチアップ。このプリアンプはデジタル回路で組まれていて、アナログ回路と違って安易に手を入れるようなことはできない。触らなくて済むのは気が楽だが回路の解析も思うようにはならずちょっと惜しい。
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トラスロッドを回して反る範囲を把握。
やや緩めた状態で直線が出てくれたので作業開始。

牛骨材のナットを外し、接触面に残った接着剤を落とす。
指板はエボニー材のため溝の角が崩れやすいので、フレットの抜き取りは慎重に。
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指板の磨り減り箇所もあったが、ここを削り揃えてしまうとフレットを残す13F以降との平面レベルがズレてしまうためそのまま残す。
研磨キズの残り具合を確認するため、一度オイルフィニッシュし磨き足りない箇所だけ再研磨。

フレットは「元と同じサイズ(磨耗していないフレットを実測して幅2mm高さ1mm)で」とのことだったが、減り具合から予想して全く同じサイズではなくやや大きめの幅2.28mm高さ1..4mmで、磨耗にも強く耐久性があるJascar #55090を勧め、12本だけ使う。
フレット溝補修のため両側に盛った接着剤とポジションマーク周囲の段差を解消する程度に指板を研磨。エボニーなので#240から始めて#1500まで。
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各フレットを規定の長さにカットして打ち込んでいく。
先に両端をネック幅に切り揃え、ベベルカットまで施してから指板面にマスキングテープを貼っていく。
残した13F以降と比較してわずかに高い。平面が出てる板に#400を貼り全体を擦り合わせ、これで解消。
高さを揃えた角を1本ずつ#400で丸め、#1000で仕上げ研磨。
手持ちのヤスリをいくつも駆使して両端の角を丸めていく。
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フレット全面にツヤが出るまでコンパウンドで磨き、テープを撤去してジッポーオイルで汚れを拭き取る。
指板を再度、オイルフィニッシュ。塗っては拭き取って乾燥、を2度繰り返す。これでフレット下の隙間も塞がってくれる。

指板のバインディングとネックの接線に引っ掛かりを感じる。
収縮により隙間が発生し、汗が染み込んだ結果だろうか。
ここもジッポーオイルで汚れを拭き、防水のためオイルフィニッシュ塗料を流して固め、#1000ペーパーとコンパウンドで段差を研磨。
塗膜を剥がしてラッカーで塗装し直すのは大きな作業となってしまうので回避(ネックはメイプル材なので、塗装を剥がして全面オイルフィニッシュにすることも可能なので考えてはみたが…)。

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ローズウッド材のブリッジも表面がくすんでいたので研磨しオイルフィニッシュ。
「メイプル材構成のため音が硬い」とのことだったので、対応策としてエボニー材のブリッジピンを入れてみる。SCUDの製品、安価ではあるが太さの精度が良くないとのレビューがあった。購入したセットはどれも規定より太かったのでヤスリで削り合わせた。テストのためTUSQのピンも購入。

 

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上から、PQ6060-00、PQ6116-00、元の牛骨ナット。
ナットは白いTUSQに交換。適切なサイズの成形品があればオーバーサイズのブランク材から削り出すよりも楽なのは明らか。
弦間ピッチに注目して選択したのは「タコマタイプ」の記載があるPQ-6116-00、"E to E"(1弦-6弦)が36.45mmと元のナットに近似。「エピフォンタイプ」PQ-6060-00は34.7mmと僅差で狭め。

 

もちろん溝加工までしてあるナットでも「ポン付け」は考えないこと
ナットが収まる部分の形状は個々のギターによって異なっていて当たり前。更にフレットの高さも溝の深さに影響する以上、やや大きめに作られた成形品を加工してフィッティングが原則として必要である。このような手間を要するパーツを理解せず商品の評価を下げたり、クレームにまで発展させてしまう方もいらっしゃるようで非常に残念である。
割と柔らかい素材なので、最初に平面台に載せた#240で平面を出しつつナットが収まるネック側スロットにジャストフィットするまで削っておく。
またネックに装着する前に、幅を合わせて可能な限り両端部分の角を丸めておく。ここは常時手で触れる部分なので滑らかな手触りにしておく方がいい。
ナットをセットした指板端にテープを貼り、少量の瞬間接着剤を爪楊枝で流すようにして固定。
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ペグを元通りに装着し弦を張る。今回渡されたのは012-053のセット。
エボニーのピンもうまく収まった。
弦の位置はナット上に刻まれてるから、ヤスリで深さを調整していけばいい。同時に指板と接する側を頂点にペグポストに向かうよう斜めに溝を修正する。
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そしてチューニングしつつネックの反り具合も確認。
ロッドは締め方向にわずかに余裕があり、しばらくは大丈夫そうな予感。

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弦高も特に異常なし、に見えたが独自デザインで分割されたサドルの高音側に問題。
2弦部分が磨耗して低め、1弦もその高さにある。磨耗してる分をツライチまで削り、1弦はそれよりも下に位置するように。弦と直交する面は角度を緩めに抑えて削る。これで弦も切れにくくビビりも出ず自然な運指で弾けると思う。

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ラベル:MTK
posted by bluesmith at 01:00| 楽器 | 更新情報をチェックする