では安価な海外生産モノはどうなっているのだろう。日本のよく知られたブランド名を背負う以上は技術的なノウハウは継承してしかるべきものであり、「価格以上の品質」を誰もが望むと思われる。
そこであちこち通販サイトを巡ったが、ひと目でコレだ!と思わせてくれるようなギターはあまりなく、大抵は "Dスタイル" 系統らしき形状。私はドレッドノートは好きではなく、"OOOスタイル" ならと考えていた。
国産ブランドの中では「マカフェリ」のような変わり種までラインナップしてるAriaに、期待通りの製品があった。

モデル名:FCO-STD、カラー:N 約¥17,000-で購入。
公式サイトの商品ページはこちら。
届いてあちこちチェック。
この価格ながらナット/ブリッジサドル共に牛骨材。
そのナットの1弦側が当たる部分、バインディングに食い込むように深めに削られている。
ペグはよくあるロトマチックタイプのコピー品。
出力ジャックはエンドピン兼用ではなく、ボディサイドに開けられた角穴にマウントされた電池Boxと一体化。
ジャックの配線を電源スイッチに流用して「プラグを抜くとOFF」するためにはこの方が合理的に収まる。
更にチューナーはプラグを刺さなくてもONにでき、この時音は出力されないのも理にかなった設計だと感心した。

ポジションマークがいかにも安物っぽい。
指板上にヤスリの傷、木目方向に斜めのため目立つ。
フレットの仕上げは70点くらい、引っ掛かりはないが運指のスムーズさに欠けるような。

パーツ撤去後に気づいたがサウンドホールが6弦側にズレている(通常の検査基準であればこれだけでB級品だろう)。
ネック裏面は濃い茶系のツヤ消し塗料で塗られているが、シーラー層も剥がして木地を出して塗装仕直し。
ブリッジピン穴の二段穴加工が雑。φ5mmのストレート形状の柔らかいプラスチックのピンがすっぽり奥まで固定できるストレート穴。標準的なテーパー形状のピンがガタなく収まるように、修正が必要。
【ペグ交換】
まずは外して確認。ペグ穴内側に垂れた塗膜を剥がすとφ11〜12mmもある。
軽量化目的で交換するクルーソンタイプGOTOH SD90のブッシュ穴はφ8.5mm、コンバージョンブッシュを用いる方法もあるがせいぜい外径10.5mmとフィットしないこともあり、埋めて開け直す方法が一番確実。

ヘッド表面を平面に研磨。

このギターには丸いプラスチックボタンの方が似合う。SD90 05MA-MGという型番になる。
そのボタンは金型の分割ラインが気になるので、削って磨いておく。

GOTOHペグはロック機構の有無だけでなく、ボタン形状などバリエーションが多いので要確認。
【フレット/ポジションマーク】
同時進行で指板上の工程。サウンドホールの縁取りがせっかくアバロンなので揃えたい。
フレットを抜いてからポジションマークを撤去。

手持ちのφ6mmではわずかに小さくて合わず、φ6.5mmサイズのポジションマークが必要。
マーク材は大和マークで購入。アクセスしにくい構造のサイトではあるが、個人客でも注文→見積もり→商品発送→到着後に請求書記載の代金を支払いという流れだった。

エポキシ接着剤で指板に固定してツライチまで研磨。購入時との比較。

【ネック周り】
ヘッドの穴開け。
継ぎヘッドのため2-5弦ペグ位置に貼り合わせラインが出ているが、ヘッド外周にマルチバインディングが入っていて突板を貼るのも困難なので形状はこのまま。黒色塗装で済ませる。

ネック部分全面の塗装剥がし。硬いのでポリエステルと思われ、部分的に分厚く盛られたような箇所もあった。
ヒールは3プライのブロックを貼り付けた構造。

木地が露出した面はサンディングシーラーで平滑化。ヘッド表にだけ黒を着色してから全面にクリアを吹く。




ヘッドもこんな感じ。

抜いたフレットを実測すると幅2.0mm/高さ1.0mm。
ひと回り大きなサイズにしたいので以前StewMacで購入したミディアムサイズ#0152、幅2.3mm/高さ1.2mmのものを使う。
上手く分割できたなら1フィート長2本分で足りる。
打ち込み、両端処理、摺り合わせ工程もいつも通り。
ナット/サドルは適応するTUSQを用意したが、元のを流用できる可能性もありオイル漬けにしておいた。
内側のふたつが牛骨、外側がTUSQ。

気になっていた、1弦側ナット下が低く斜めなので突板とバインディング材を貼って指板底面の基準まで合わせる。

ヒール裏にあったストラップピンも似合うタイプに交換してヒールサイドに移設。

上述したブリッジピン穴は先に瞬間接着剤を流して固めておき、デフォルト形状としてTUSQピンがキツめに収まるように加工。
音質テストのため白TUSQの他にエボニー材も用意した。
そのままでは抜けてしまうので深くセットされるように弦が通る溝を加工。

元の牛骨ナット/サドルが使えることを確認して組み立てる。
弦を張る。本来はトレモロ(ビブラート効果のアーム)使用時においてピッチ安定性向上のため開発されたマグナムロックであるが、弦をポストに巻かずに済む利点でトレモロユニットの有無に関係無くおススメしたい。弦交換が非常に楽である。


弦テンションに馴染ませるため少し放置。
順反りが解消するまでトラスロッドを締め込む。
ナット溝を調整して弦高は12F上で
1弦:1.5mm、6弦:2.0mm
まだ違和感があるのでサドル下端を少しずつ削って下げた結果。
1弦:1.2mm、6弦:1.7mm
ほぼ計算通り、これでいい。
本体に設置内蔵されたプリアンプ、3バンドEQにプレゼンスとノッチフィルタもあり、更にバックライト付きLCD表示チューナーまで着いている。
そのチューナー、センターを挟み高低各10ポイント表示ではあるものの分解能が低いため演奏の合間に確認する程度なら使えるが、設置場所が悪く視野角も下方からなので演奏時の構えた状態での視認は不可能。ヒール真横に設置するなら視野角はOKだったと思う。
裏蓋を開けると見える内部基板はEQ周り、その奥にLCDと一体に組まれたユニット化されたチューナー。
今回基板に手は着けていない。オペアンプは交換したいところ。

そのプリアンプユニットの建て付けが良くない。
サイドのカーブに合わせ直し、穴位置も修正。
ジャック/電池Boxも下穴が雑に開けられていたので修正。
この2箇所はサビを防止したいので2mmステンレスタッピングネジで固定。
さて試奏。
サイド/バックが3プライの合板ではあるが、そんなにハンデにはなっていない印象。
全面修正を施したネックは上々、誰にとっても弾きやすく仕上がった。
TUSQピンとエボニーピンの比較結果として、TUSQは高域の輪郭が立って倍音が豊か。
エボニーは中域が前に出るようなマイルドさ。
このようなパーツに互換性保証なんて存在しないので形状によっては換装に手間取る可能性も考えられるが、ピン交換だけでも音質をコントロールできるので試す価値はある。



これで、アコギの修理が入っても代わりのギターとして貸し出せる。もちろん調整済み見本でもある。
付属のソフトケースであるが、生地が薄く保管時のホコリ除けにしかならない。
安全に持ち運びくためにギグバッグをチェック、条件はなるべく安く。
予算¥2,000-と考えた上で、CAHAYAという製品を見つけた。黒一色でないのも好印象。
ポケットは最小限でいいので2ポケタイプを注文。ネック基部で2つ折りにされて届いたが、この価格にしてクッションの厚みは充分、縫製に不安は感じずジッパーもスムーズに動く。強いて言えばショルダーストラップがちょっと貧弱。
サイズ的にはドレッドノートでも難なく収納可、多少混む電車での移動も大丈夫だろう。
ついでにクリップ式チューナーも紹介。これは買っておいて損はない。
老舗KORGの安価なモデル、初期生産の赤い色を愛用。最低限の機能でも不都合は感じない。
バックライト付きLCDよりもLEDの方が表示反応も早く、演奏時でも目障りになりにくいと思う。
よく似た外見で中華ブランド製品もあるようだが信頼性において比較したくはない。